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仙台高等裁判所 昭和25年(う)812号 判決 1950年11月25日

被告人

柴田利雄こと

宮川寅雄

主文

本件控訴は之を棄却する。

当審に於ける訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人工藤鉄太郎の控訴趣意二、に付て。

原判決は被告人の検察官及司法警察員に対する各供述調書を証拠に引用したこと、是等の書類は訴訟関係人に於て証拠とすることに同意したものであること是等の書類を証拠として採用するには、刑事訴訟法第三百二十六条第一項に基き、其作成された時の情況を考慮し、相当と認める場合たるを要すること且原判決には其作成された時の情況を如何に考慮し、如何なる理由で相当と認めたかの記載がないこと、孰れも所論の通りである。然し、原判決が右書類を証拠として採用したからには、原審裁判官が、右書類の作成された時の情況を考慮し、之を証拠とするを相当と認めたからであつて、其「相当と認めた理由」の如きは、原審裁判官の心証形成の過程であるから、之を判決に於て具体的に説示するの必要がないものと謂うべく、刑事訴訟法の規定に照しても、斯かる理由の説示を必要とするものと解される規定は存しない。それ故、原審には何等訴訟手続上の法令違背の点がないのであつて且記録に徴しても、原判決が右書類を証拠に採用したことは、採証法則に違背したことは認められず、又原判決の認定には、誤認の違法もない。論旨は理由がない。

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